ユリの花粉母細胞と胚のう母細胞の正常・異常減数分裂における微小管の動態変化を共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡やクリオスタット切片を用いた間接蛍光抗体法によって調査し、次の知見を得た。 1.減数第一分裂前期にみられる核膜からの放射状微小管は、核膜崩壊後の二極からなる紡錘体の形成に関与する。 2.減数第一分裂と第二分裂の終期にみられる隔膜形成体微小管は必ずしも細胞質分裂(細胞板形成)に機能しない。 3.染色体の状態(一価・二価染色体)が二極からなる紡錘体の形成に関与することから、減数分裂における動原体の重要性が示唆された。 そこで、動原体と微小管の同時可視化のために、動原体特異的抗体をもつことが知られているヒトの自己免疫病患者CREST(約20名)の血清を用いて動原体の検出を試みたが、ユリの動原体は認識しなかった。ところが、テッポウユリの減数分裂期に特異的に出現する核タンパク質を抗原として作製した抗血清の中に、雌雄減数分裂期染色体の動原体を認識できるものが見出され、この抗血清を用いて、減数第一分裂の合糸期から太糸期にかけての相同動原体の会合・融合、複糸期における解離、中期における二倍加、第一分裂後期における姉妹動原体の不分離、第二分裂後期における姉妹動原体の分離が初めて観察できるようになった。この抗血清は体細胞染色体の動原体は認識しないことから、減数分裂に特異的な動原体タンパク質の存在が強く示唆される。そこで現在、減数分裂における動原体の挙動と微小管との関連を二重染色によって解析中である。
|