平成6〜7年度の研究計画である免疫組織化学法による成体雄ラットの球海面体脊髄核(SNB)の運動ニューロンにシナプス結合する軸索終末の化学的同定およびその動態に及ぼすアンドロゲンの効果に関し、次の結果が得られた。 1.チロシン水酸化酵素(ドーパミンやノルアドレナリンの指標となる)、エンケファリン、P物質、グルタミン酸、γ-アミノ酪酸(GABA:神戸大学医学部岡村均教授提供)の抗体を用いて、SNB運動ニューロンにシナプス結合する軸索終末を免疫組織化学的に検索した。 2.成体雄ラットのSNBでは、チロシン水酸化酵素、エンケファリン、P物質免疫陽性の軸索終末がSNB運動ニューロンとシナプス結合することが判明した。しかし、これらの免疫陽性軸索終末の出現頻度は極めて低かった。 3.抑制性神経伝達物質と考えられているGABAの抗体を用いて成体雄ラットのSNB運動ニューロンにシナプス結合する軸索終末を免疫組織化学的に検索した結果、多数のGABA免疫陽性軸索終末がSNB運動ニューロンにシナプス結合していることが判明した。雄ラットを去勢すると、SNB運動ニューロンにシナプス結合するGABA免疫陽性軸索終末の数が正常雄のそれより減少することから、アンドロゲンはSNB運動ニューロンにおいてGABAを神経伝達物質とするシナプス結合を調節していることが示唆された。
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