研究概要 |
アメリカザリガニは尾扇肢への機械的接触刺激に対し、両側の尾扇肢を閉じながら前進する回避行動を示す。この接触感覚情報が腹部最終神経節内のどのような局所神経ネットワークによって運動出力に変換されるか、電気生理学的解析を続けた結果、 (A)ノンスパイキング局在性介在ニューロン同士の間にシナプス相互作用が認められた。ノンスパイキング局在性介在ニューロンはその基本的構造の違いから大きくAL,PLグループに分類できるが、両グループ内、両グループ間でそれぞれシナプス接続が確認できた。 (B)ノンスパイキング局在性介在ニューロン間の抑制性シナプス接続は化学的なシナプスを介したものであることが判明した。一方のノンスパイキング局在性介在ニューロンは必ずもう一方のノンスパイキング局在性介在ニューロンにたいし、シナプス前ニューロンとして機能し、接続は常に一方向性であった。シナプス前ニューロンへの電流注入によってシナプス後ニューロンに生じる膜過分極の振幅はシナプス後ニューロンへの脱分極性電流注入によって大きくなり、過分極性電流注入によって最初は小さくなった。さらに強い過分極性電流注入によって膜電位の変化は逆転し、脱分極性の応答を示すようになった。 (C)ノンスパイキング局在性介在ニューロン間の興奮性シナプス接続のうち、約半数のケースでは抑制性シナプス相互作用と同様の化学的シナプス接続の特性を示したが、残りの接続は、電気的なシナプス接続を示唆する特徴を示した。ある接続では、シナプス後ニューロンの膜脱分極の振幅はどちらの極性の電流注入によっても変化せず、また別の接続では脱分極によってその振幅は大きくなった。 (D)二種類の別々の励起光波長を持つ蛍光色素を用いた二重ラベル法によって、腹側・背側を問わず、約50カ所程度、分枝同士がオーバーラップしていたのが観察された。
|