研究概要 |
1.アフリカマイマイから単離した3種類のペプチド(FMRFamide,ACEP-1.fulicin)の抗体を用いて、この動物の神経-筋系におけるペプチドの局在を免疫組織化学的に調べた.その結果、FMRFamideとACEP-lは脳及び食道下神経筋内の多くのニューロン、心臓神経及び心房に分布していることがわかった。生理実験の結果と併せ考えて、両ペプチドはこの動物の心拍動調節に関与していると考えられる。またfulicinは脳及び足神経筋内のニューロン、陰茎牽引筋及びその支配ニューロンに存在していることを明らかにし、生理実験の結果と併せて、fulicinはシナプス修飾物質として、陰茎牽引筋の収縮調節に関与していると結論した。 2.Fulicinのアナログ42種類を合成し、陰茎牽引筋を生物検定系として構造-活性関係を調べた。その結果、1)N末から2番目のD型アミノ酸の存在が極めて重要,2)3番目のGluも重要でこれらが活性の一つのセンターである、3)C末がアミド化した全体として5個のアミノ酸の存在が必要、等を明らかにした。 3.アフリカマイマイ中枢神経節からmRNAを抽出してcDNAライブラリーを作成し、PCRによってfulicinをコードしていると思われるcDNAの一部を得た。この産物をもとにプローブを作成し、cDNAライブラリーをスクリーニングしてfulicinをコードする完全長の遺伝子を得た。また、in situ hybridizationの結果から今回単離されたfulicinの遺伝子が、実際に中枢神経節、特に脳及び足神経節内のニューロンにおいて発現していることを明らかにした。 以上の研究結果は,D型アミノ酸を有する神経ペプチドの生理的機能と生合成機構について重要な知見を与えるものと考えられる.
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