研究概要 |
本研究の目的は、舌上皮の中で味細胞と神経がどのようにシナプス結合して行くかを調べるための実験系を作る事である。動物モデルとしてサンショウウオ(Ambystoma maxicanum)を用いた。平成6年度はコラゲナーゼ処理で単離した舌咽神経と小さく切り出した舌上皮をそれぞれL15培地で調整した培養液中で育てた。舌咽神経は培養開始後、24-48時間で神経突起を伸ばしはじめた。大型(直径30μm)の細胞が生育が良かった。2週間後には突起を1mm近く伸ばすまで成長した。舌上皮から味蕾を含む小片を切り出し、1週間培養すると上皮細胞は培養器底に付着し成長した。味蕾は特徴的な形をしているが、付着した条件下ではこの特徴は失われた。舌上皮には味蕾以外にも舌咽神経とシナプスする細胞があるので、蛍光色素標識と電子顕微鏡により調べたところ、味覚でなく機械刺激受容性であることが判明した(研究発表の項参照;Nagai and Koyama,1994)。 L15培地では神経の生育は良いが、味蕾は良くなかった。そこで、7年度はこれを改善し、上皮細胞の3次元的構造を培養系で維持するために、コラーゲン・ゲル中での培養を室温、クリーンベンチ内で行った。舌咽神経節を切り出し、神経を単離しないで神経節全体をゲル中で培養した。3ないし4日後、神経節から出る神経束の断端から神経線維の成長円錐が伸び始め、約1週間成長を維持できた。同じゲル条件で味蕾を含む舌上皮の小片を培養したが、味蕾の特徴的な構造は急速に失われ24時間以上の培養は困難だった。上皮細胞が酸素の供給などの障害になると思われたので、酵素処理によって味蕾を囲む上皮細胞を除去すると6日程度まで培養できた。今後は、酸素の供給に配慮した炭酸ガス・インキュベータ内での培養が必要である。
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