これまでの研究において、(1)ヒラハコケムシでは、その二次元円形状群体パターン形成過程を、摂食効率の観点から再現する数理モデルを構築し、二分岐における双子個虫の長さの違いは、虫室の長さを調節する遷移規則に基づいて、それぞれ独立に虫室の長さを調節していることがわかった。(2)ツノマタコケムシでは、その二次元被覆型円形状の群体中には、異形個虫が点在している。この異形個虫は、外敵から群体を防御する役割を担っているといわれている。そこで、採餌効率および防御の観点から群体を解析し、ヒラハコケムシとの比較を行った。その結果、以下のように、数理計測形質によって種を特徴づけられることがわかった。(1)ツノマタコケムシはヒラハコケムシよりも積極的に二分岐しており、これは異形個虫を生みだすために必要と思われること、(2)外縁部ほど防御は手薄になっていることから、異形個虫の出芽は、防御の観点からは必ずしも効率よく行われていないこと、(3)採餌効率という観点では、ツノマタコケムシの虫室の配置は、ヒラハコケムシに比べて緩やかであるが、採餌効率の良い虫室の配置の方に偏っている。 以上の研究結果の応用として、コブコケムシとウスコケムシの種分類に実際に個虫等の計測形質を用いた論文をとりまとめた。ウスコケムシは異形個虫を持たないヒラハコケムシ型の群体を作り、個虫の計測形質もほぼヒラハコケムシに順ずる形で処理できた。
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