研究概要 |
日本産ホンダワラ類の種間の系統関係を解析する目的で,本研究では形態分類学的手法と分子系統学的手法の両方を用いて研究をおこなっている。形態分類学的な研究の成果として,3種類の新種の発見が挙げられる。これらは,和歌山県南部からみつかったナンキモクSargassum wakayamaense Yoshida,佐渡島より採集されたエチゴネジモクS.araii Yoshida,そして兵庫県浜坂町大槌島深所で採集されたタマエダモクS.bulbiferum Yoshida,である。これら3種類は限られた分布域をもつことが明らかとなっており,今後の分子系統学的研究の材料としても興味深いものである。 一般に褐藻類の分子系統学的研究は世界的に見てもあまり進んでいない状況であるが,当研究室においてもその研究を開始したばかりであり,当初の計画通り平成6年度は基礎技術の確立に努めた。北海道沿岸より採集した海藻類(ホンダワラ類やその他の褐藻類,紅藻類,緑藻類など)を5種類の全DNA抽出法により処理し,DNAの抽出方法の検討をおこなった。その結果,抽出緩衝液にプロテアーゼを加えておこなう方法が比較的有効であることが明らかとなった。また,抽出したDNAを用いて,ゲノムの中の小さな逆向き反復配列部分をザイモリアクターによって増幅するRAPD法を試したところ,種類によって異なるバンドが得られることが明らかとなった。しかしながら,抽出したDNAの純度は未だ高いとは言えずPCRの結果も安定していないことなどから,今後もさらにDNA抽出方法の改善を続ける必要がある。本年度以降はこれら確立した手法を用いて,実際のホンダワラ類の個体群間・種間の遺伝的変異の検出に応用していく予定である。
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