研究概要 |
日本産のホンダワラ類の系統関係を解析する目的で,本研究では形態分類学的手法と分子系統学的手法の両方を用いて研究をおこなっている.一般に,海藻類からの純度の高いDNAの抽出は困難であると考えられており,特に本研究で対象としている褐藻類はDNA抽出が難しいグループとされている.本研究では分子系統学的研究の導入の為の基礎研究としてホンダワラ類からのPCR品質のDNAの抽出方法の確立をまず目指してきた.その結果,ホンダワラ類の場合には雄の生殖器床を用いることがもっとも効率よくDNAを大量に回収出来ること,またそれにGENECLEANIIを併用することにより純度の高いPCR品質のDNAが抽出できることを明らかにした. このような手法で抽出されたDNAを用い,ホンダワラ類の属するヒバマタ目内の系統関係を明らかにし,現行の科レベルの分類を再検討することを目的に,18Sリボソーム遺伝子の全塩基配列をホンダワラ属(アカモク,フシスジモク類似種),スギモク属(スギモク),ウガノモク属(ウガノモク)の4種類について決定した.これらの配列をすでに公表されているコンブ目の配列を外群として系統解析(最節約法)をおこなったところ,ホンダワラ属の2種類と他の2属がそれぞれcladeを形成し,これらは互いにヒバマタより近縁であった.当初の目的である科レベルの再検討にはさらに異なった属の同様の解析が必要であると考えられる. また,種レベルの系統関係の解析としては,PCRにより増幅したITS領域のRFLP解析をおこなった.材料はフシスジモクと厚岸産のフシスジモク類似種である.これらは,形態的に類似するもののいくつかの違いが指摘されていた.今回の調査により,厚岸産のフシスジモク類似種は他地域のフシスジモクとは異なるバンドパターンが得られ,形態的研究の結果を支持する結果が得られた.
|