研究概要 |
日本産のホンダワラ類の系統関係を解析する目的で,本研究では形態分類学的手法と分子系統学的手法の両方を用いて研究を行ってきた。本年度は3年計画の最終年度にあたり,昨年度に引き続きデータの蓄積を進めるとともに,研究全体の総括をおこなった。本研究ではまずDNA抽出が難しいと言われる褐藻類からのDNA抽出法としてオスの生殖器床からDNAを抽出する方法を確立した。この方法を用いて日本各地から採集または提供された材料について分子系統学的な解析をおこなった。 ホンダワラ類の所属するヒバマタ目全体の系統関係を明らかにするために,本目に属する6属10種について18SrDNAの全塩基配列を明らかにした。その結果,形態形質ではウガノモク科に属するジョロモク属が分子系統解析では高い確率でホンダワラ類と姉妹群になることが示された。また,独立した属として扱われるヒジキ属はホンダワラ類のクレードに入るらしい(つまり独立性は疑わしい)ことが示唆された。分子系統解析の結果をもとに科レベルの形態形質として適当な形質を探索したところ,卵形成の様式が分子系統解析の結果とよく一致することがわかった。 ホンダワラ類(属)内の種間の系統関係についてはより進化速度の早いリボソーマルRNA遺伝子のITS領域を用いて(特にITS2)解析した。その結果,ジョロモクやヒジキの位置に関しては,18SrDNAと同じ結果を得た。また,ホンダワラ属の中では,いくつかのクレードに分かれることが明らかとなった。このクレードと形態形質との関連については検討中である。 形態学的研究から今まで,フシスジモクと混同されていた北方産の種が,フシスジモクとは異なることが示された。また,本種の分子系統学的な解析もフシスジモクとは離れていることを示している。従って,本種を新種ホッカイモク(Sargassum boreale)として発表することとした。
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