研究概要 |
平成6年夏季に沖縄県西表島においてヤエヤマサソリ約300個体を採集し,実験室内の28℃の恒温器内でシロアリを餌として個別飼育した結果,雌成体約40個体が合計約800の若虫を出産した.これらの母虫にはすべて番号をつけ,外部形態の特徴を記録した.産まれた若虫にもすべて番号をつけて個別飼育し,各齢期ごとの代表例を固定保存し,櫛状器の歯数など外部形態の個体ごとおよび齢期ごとの変異を記録した.飼育の途中で死ぬものもあり,特に1995年4月には恒温器の異常高温のため多くの飼育個体を失い,1996年3月10日現在の継続飼育個体は56で,最も早い個体は昨年3月に,他は昨年5月〜今年3月の間に成体(6齢または7齢)に達して単為的に妊娠し,現在までに4個体が合計49の若虫を出産した.これら3世代目の若虫には,現在18個体の2齢若虫がいる. これらの資料から,姉妹の若虫間の特徴および,母虫の特徴とその娘虫が成体になった時の特徴をそれぞれ比較して,表現型の変異の遺伝性と遺伝様式を推定しつつある.まだ母-娘間や3世代目の比較の資料は少ないので,結果の集計は最後の年度に行なう. 一方,妊娠開始直前(最終脱皮または出産の直後)の雌個体を時間を追って解剖し,卵母細胞の成熟分裂を確認するとともに,成熟分裂後の極体の消長を組織学的に追究した.すでに組織学的には,成熟分裂中期の二価染色体像が観察されているので,空気乾燥法により染色体数の半減を確認し,さらに組織学的に成熟卵と極体の核の融合を確認し,成熟分裂によるヘテロの遺伝子の分離および成熟卵と極体の核の融合による遺伝子の組み換えが,本種の表現型の変異の原因であることを推定する予定であるが,空気乾燥法による減料を得て,最終年度(平成8年度)には結論を出したい. 平成7年7月に西表島から新たに成体と各齢期の若虫約200を採集し,補充した.
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