研究概要 |
平成6〜7年度科学研費一般研究(C)の交付を受け、「東アジア産タケ類における葉緑体DNAのRFLPs法による系統関係の解析」の課題を実施した。しかし、平成6年度内にこの課題と類似した研究結果が発表されたので(Watanabe et al, 1994)、タケ類の範囲を世界全域にわたる32属に広げて分析を行い、結果の一部を日本植物学会第59回大会(1995、金沢)で発表した。使用した材料は、日本産9/中国産4/熱帯アジア産8/アフリカ産1/メキシコ産1/南米産木本性4;草本性5種およびタケ亜科に近縁なイネ科植物4属である。系統関係の解析のための外群として、イネ科とツユクサ科の中間に位置するトウツルモドキ科のトウツルモドキを使用した。 その結果、2倍体から6倍体のすべてを含む系統のある一方で、アジアの6倍体のバンブ-類がそれぞれ異なった系統にまたがり、そのうちの多くがアフリカのオキシテナンテラを祖先型としながら、中南米のタケ類と姉妹群を形成すること、日本産ササ類がよくまとまった独自の系統をつくることなどが明らかとなり、世界のタケ類が必ずしも単系統ではないことを示唆した。他方、八丈島三原山に分布するチシマザサの変種、ササ属ミクラザサが日本産ササ類とは遠くかけ離れたアジア・中南米産タケ類の祖先型の位置を示すという意外な結果が得られ、上記の結果の解釈も合わせて、葉緑体遺伝子の母性遺伝の特質から雑種起源の分類群の介在が示唆された。
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