研究概要 |
ナミザトウムシ種群3種(ヒコナミザトウムシ,エゾナミザトウムシ,オオナミザトウムシ)の核型分化過程を推測する目的で、比較用のサトウナミザトウムシ種群の2種(アオキナミザトウムシとサトウナミザトウムシ)を加えた多数の集団で核型を調査した。その結果,(1)サトウナミザトウ種群の2種とエゾナミザトウムシがそれぞれ,2n=16と22であることが判明し、(2)ヒコナミザトウムシとオオナミザトウムシに認められる種内の核型分化(それぞれ2n=16-22,18-22の範囲で地理的に変異)についてはそれらの核型間の交雑帯の位置をほぼ特定できた。外群比較および核型の地理的分布パターンより、ヒコナミザトウムシでは2n=22→20→18→16,オオナミザトウムシは2n=22→20→18の方向へ変化したと推測される。 鳥取県大山にみられるヒコナミザトウムシの2n=18と20の集団間の交雑帯について、その性質を明らかにした。本交雑帯では、2n=19の核型の個体数の出現率が期待値よりも有意に低い。その原因として交雑個体における精子形成能の低下を予測し検討をおこなったが、精子形成能に差は認められなかった。 ヒコナミザトウムシの核型の異なる集団間のmDNAにおける遺伝的分化の程度を見積もるため、本種の6集団について、mtDNAのCo1(Cytochrome oxidase 1)遺伝子のDNA断片(約1kbp)を増幅し、塩基配列を決定した。染色体数が異なる3つの地域集団の間では、310bpの内、6サイトで塩基置換が認められた。今回配列決定した部分では、遺伝子型を区別できる適当な制限酵素サイトがないので、mtDNAの全長を増幅するlong PCRを試みており、今後さらに詳しい集団解析を行う予定である。
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