研究概要 |
1)平成8年度は,昨年度,日本各地から採集されたStereocaulonの棘枝部分から分離され継代培養によって保存されていた共生藻(prymary photobiont)を再検討した.その結果3属3種の緑藻類を確認した.またこれらの種に関して,数種のStereocaulonでは1個体内に3属3種の共生藻が同時に共生している現象が明らかになった. 2)また,今年度は,頭状体中の共生藻(secondary photobiont)について野外標本および標本庫に保存されていたStereocaulonを用いて検討をおこなった.頭状体中の共生藻は,全て藍藻類(シアノバクテリア)であった.同定された藍藻類は,4属であったが野外標本からの分類学的検討のため,種レベルでの確認は困難であった.それらはGloeocapsa sp., Nostoc sp., Scytonema sp., Stigonema sp.であった.Stereocaulon depreaultii, S.japonicum, S. octomerumでは,2属の藍藻類が同時に1頭状体中に共生している現象が確認され,頭状体の取り込む共生藻にも多様性のあることが前年度に引き続き明らかになった. 3)前年度から引き続き,地衣体の組成培養を継続して行ったが,培養条件(培地,温度,湿度など)を変化させて地衣体の再分化を促しても,今年度もカルス状態を維持したままで,カルス上に地衣体の発生初期段階と考えられる微細な組織が形成されてきているに留まっている.地衣体の再分化を行わせるため,現在も研究を継続している.
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