研究概要 |
オルセイン染色,CMA及びDAPI蛍光分染,rRNA遺伝子プローブpTa71によるin situハイブリダイゼーション(ISH)法でによる分析による日本産キク属近縁のワカサハマギク,アブラギク,シマカンギク,リュウノウギクの染色体をマ-キングし,比較した。4種のオルセイン核型は今までに報告されたものと同一であったが,相同染色体は区別しにくかった。染色体長は漸変的であった。CMA/DAPI分析では,ワカサハマギクでははっきりと現われた2-3個の付随体染色体の端部がCMAポジテイブであり,DAPIネガテイブであった。個体によっては,CMAバンドがまったく現われないものや,いくつかの染色体の基部,端部にDAPIバンドの現われるものもあった。アブラギクは,はっきりと現われた1-3個の付随体染色体の端部がCMAポジテイブであり,かつDAPIネガテイブであった。シマカンギクは,はっきりと現われた1-2個の付随体染色体にCMAバンドが蛍光を発したが,個体によってはCMAバンドが全く現われないものもあった。核型を構成する多くの染色体端部にはDAPIバンドが出現した。リュウノウギクは,きまって4個の付随体染色体が現れ,その内1叉は3個の端部がCMAポジテイブ,DAPIネガテイブであった。個体によっては,核型を構成する多くの染色体の介在部や動原体部位にCMAバンドが現われたり,端部,基部,動原体部位,ならびに付随体染色体にDAPIバンドが現われたものもあった。ISHの結果,リボゾームRNA部位の数は,4種を通して,付随体の数と一致したが,キク属一般に付随体の仁形成部位に現われるCMA蛍光バンドの数とは一致しなかった。ISHにおいて,リボゾームRNA遺伝子部位の中期におけるシグナル数は,系統において安定していた。また,間期において仁形成領域の周りを取り囲むようにしてシグナルが現われたことから,ISHにおいて確認されたリボゾームRNA遺伝子部位は,全てが発現しているものと考えられた。また,リボゾームRNA遺伝子部位の塩基配列は,リボゾームRNA遺伝子プローブpTa71が,安定してハイブリダイズしたことから,ホモロジーが高いことが確認された。従って,CMAのGCリッチ領域への結合能が失われるほど,塩基配列が変化しているものとは考えにくかった。またCMA分染により検鏡が可能になった付随体も1/2〜1/3程度しか強蛍光を発しなかった。ISHのシグナル数は,リュウノウギクで4個,アブラギクで6個,シマカンギクで10個,多くのワカサハマギクで8個であった。
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