平成6年度、7年度に引き続き、コムギ由来の18S-5.8S-26SrDNAをくみこんだブラスミド、pTa71をプローブとした蛍光インシチュ・ハイブリダイゼーション法を用いて日本産広義キク属4倍体種シマカンギク、ナカガワノギク及び中国産D.chanetiiの体細胞有糸分裂中期染色体上でのrDNA部位の検出を行った。その結果、付随体にハイブリダイゼーションシグナルが現われることをつきとめ、それがシマカンギクとD.chanetiiで共通して8個、ナカガワノギクで10個観察された。これらの染色体上の位置と数は種特異的で、種ごとに安定しているので、種間関係、雑種化などが分析でき、系統分類学的形質としてかなり有用であるこのが示唆された。間期核や体細胞有糸分例前期染色体でもそのシグナルの数は、中期染色体でみられた数と同数であった。また、広島県因島から大三島にかけてと山口県徳山市方面のアブラギク、セトノジギク、リュウノウギクの個体を多数採集し、広島大学理学部附属植物遺伝子保管実験施設で系統保存するとともに、同じ蛍光インシチュ・ハイブリダイゼーション法を用いて、シグナル数の変異性を調べ、移入交雑の存在を明らかにした。 一方、ホソバノセイタカギク(ミコシギク)とハマギク(両種とも2n=18、二倍体)及び両種のF_1雑種を作出して材料とし、蛍光インシチュ・ハイブリダイゼーション法を用いて染色体を観察した。ホソバノセイタカギクの体細胞有糸分裂中期染色体の付随体部位で6個のシグナルが確認されたが、そのうちの4個は強い蛍光を示した。また、CMA蛍光分染で付随体部分が4個のものと6個のものが観察されたが、この現象は数の変異性ではなく、付随体のGC塩基配列のコピー数の差であることが強く示唆された。さらにハマギクの体細胞中期染色体では2個、F_1雑種では4個のハイブリダイゼーションシグナルがいずれも付随体部位で観察された。一方、ホソバノセイタカギクの全ゲノムをプローブとし、ブロッキングDNA処理を行わなかったゲノミック・インシチュ・ハイブリダイゼーション法(GISH)を用いてF_1雑種の体細胞染色体を観察したところ、二様相核型のうち、ホソバノセイタカギクに由来する長い染色体にのみ蛍光を発し、特に各染色体の両腕端部は強い蛍光を示した。ハマギク由来の短い染色体にはシグナルは観察されなかった。さらに同様なGISH法を用いて、F_1雑種の減数分裂染色体を観察したところ、両種由来のいくつかの染色体で二価対合がみられ、また転座も確認された。
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