1.無頭類グレガリナの系統類縁関係を明らかにするため、数種類の環形動物のグレガリナ類の寄生について調査した。その結果シマミミズ、イソミミズ、フツウミミズの3種より、Apolocystis属グレガリナ3種類、Nematocystis属グレガリナ2種類、Monocystidae科グレガリナ1種類を発見した。形態的特徴から考えて何れも本邦で初めて観察された未記載種と考えられる。 2。シマミミズに寄生するグリガリナの感染率と体長の季節的変化を調査した。種類によって季節的変動のパターンは異なるが一般的には春先から初夏にかけて感染率が高くなるが、夏場はほとんど見ることが出来なくなる。体長に関しては大きな変化は見られないが、冬から春にかけて若干大きいように見える。 3.有頭類グレガリナと無頭類グレガリナ系統類縁関係を明らかにするため、体表面構造、核、ムクロンの微細構造について電子顕微鏡により調べた。スジホシムシモドキに寄生するFilipodium属グレガリナの毛状構造を透過型及び走査型電子顕微鏡で観察し、その構造が繊毛構造とは全く異なった構造を持っていた。有頭グレガリナOdonaticola属の核を分離し、走査電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡により調べた。カワトンボに寄生するグレガリナの核は表面が繊維状網状の構造に覆われていた。また核を隔壁に固定する透明な紐状の構造が見つかった。アキアカネに寄生するグレガリナの核の表面はカワトンボのグレガリナとは異なり核表面が滑らかで大小の核膜孔が見られた。これらの構造は胞子虫類においては初めての発見である。 4.異宿主間におけるGregarina blattarumのクロッス感染について調べた。グレガリナが感染していないチャバネゴキブレリ、クロゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリにチャバネゴキブリのグレゴリナのオオシストをエサに混ぜて摂食させた後毎日排泄物を観察しガメトシストの排出がないか調べた。ガメトシストの排出がみられたのはチャバネゴキブリのみで、他のグループからは全く見られなかった。同様にクロゴキブリに寄生するグレガリナのオオシストをチャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリに摂食させ、ガメトシストの排出を調べた。ガメトシストの排出がみられたのはクロゴキブリのみで他からは排出は全く見られなかった。この実験により同種の宿主のグレガリナは感染能力を持つが、異宿主のグレガリナは感染能力を持たないと言うことが判明した。
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