北海道の白亜系植物化石産地において採集調査を行い、多数の含化石ノジュールを採集、ピ-ル法による標本作製と観察を行った結果、裸子植物の絶滅新群の存在が明らかになった。現生4綱のそれぞれにに匹敵する分類群である。 具体的には以下のような成果があった。 1.ベネチテス類裸子植物の生殖器官の形態学的構造が明らかになった。 中生代の代表的裸子植物のひとつであるベネチテス類の生殖器官は、被子植物の花と似ており、その祖先とも言われた。生殖器官の構造がはっきりしたことで、被子植物との関連は否定される一方、ベネチテス類の形態進化の過程を解明する基礎ができた。論文は発表ずみである。 2.類縁不詳だった果実状繁殖器官の構造が明らかになった。 これまで被子植物のものと考えられていた果実状繁殖器官の構造が明らかになり、裸子植物のものであることがわかった。かつては裸子植物にも果肉をつくるものが多くあったことがはっきりした。ジュラ紀のインドから知られるペントキシロンに似るが、ペントキシロンの繁殖器官は内部構造が良くわからず、はっきりした類縁は不明である。白亜紀の新分類群(綱)とすべきものである。記載報告を準備している。 3.2の果肉を食べる甲虫の幼虫を発見した。 裸子植物の果肉を昆虫が利用した形跡があったが、その証拠となる虫は発見されたことはなかった。本研究で発見された幼虫は、鉱化化石中の幼虫化石として世界で初の発見であるだけでなく、昆虫と植物の共進化を明らかにする上でも画期的な資料である。記載報告を準備している。
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