研究概要 |
今年度も引き続いて、Amanita属のRoakenses節を研究対象とし、A.gymnopus Corner & Basから4種の特異的な非タンパク性アミノ酸を証明して公表した[Micoscience 35,391-394(1994)]。いずれも炭素原子6つからなる中性不飽和アミノ酸で、(2S)-2-アミノ-5-ヘキセン酸、(2S)-2-アミノ-4,5-ヘキサジエン酸、(2S)-2-アミノ-5-ヘキシン酸、さらに今まで知られていなかった(2S)-2-アミノ-5-クロロ-4-ヒドロキシ-5-ヘキシン酸である。さらに、同節に属するA.cokeri(Gilb.et Kuhn.)Gilb.f.roseotincta Nagasawa & Hongoの類縁種の採集に成功したので、同様に特異的非タンパク性アミノ酸の種類と分布パターンを調べた。その結果、A.gymnopusと共通な2種類、すなわち、2-アミノ-4,5-ヘキサジエン酸と2-アミノ-5-クロロ-4-ヒドロキシ-5-ヘキシン酸が見い出された。特に後者は、乾燥重量あたり約1%という高収率で単離され、今回、初めて分解点、元素分析値、旋光度を求めることができ、以前A.gymnopusのアミノ酸について推定した構造を確認することができた。植物・菌類を通じて、特異的な非タンパク性アミノ酸がこのように多量に蓄積する例は極めて稀である。本アミノ酸は予備実験の段階ではあるが、Vigna radiataの種子発芽に対し、10^<-3>およ10^<-4>Mで阻害効果をもつことが明らかになっている。この結果は構造研究と共に、本年5月28日、日本菌学会第39回大会で発表する予定である。本菌は前述の菌に極めてよく似ているが、細部では異なっており、今後の精査によっては、新種として記載すべき結果も期待される。
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