研究概要 |
初年度はすでにほぼ完成していたA.gynnopusに関する研究を論文として投稿した。さらに、この年の夏、協力者により採集されたAmanitaの一種のアミノ酸を精査することが出来た。その結果、以前A.gymnopusから証明した(2S)-2-アミノ-5-クロロ-4-ヒドロキシ-5-ヘキシン酸が高濃度に蓄積していることが明らかになったので、はじめて結晶を単離し、本アミノ酸の物理化学的性質の記載を補うとともに、以前推定した化学構造を確認することが出来た。 本菌は、長沢によるその後の検討により新種とすべきであるとの結論にいたり、近く発表を予定している。 次年度も、同節の未調査であったA.hongoiの非タンパク性アミノ酸を調べた。C5のものは微量で単離出来なかったが、C6のものは比較的多量に2種(IとII)検出された。そこで子実体のエタノール抽出液から常法によりアンパーライトIR-120B(H^+)とダウエックス-1×4(酢酸型)によりIとIIを単離精製した。Iは薄層クロマトグラフィにおける移動度、ニンヒドリンによる呈色反応、アミノ酸分析計における保持時間等が、特にRoanokenses節に広く分布する2-アミノ-4,5-ヘキサジエン酸によく一致した。IIは溶出液を濃縮すると直ちに結晶化し(63mg)、80%エタノールから3回再結晶した。分解点は203-205°、元素分析値はC_6H_<10>NO_3Clの計算値とよく一致した。^1Hおよび^<13>C-NMRスペクトルにより構造解析をおこなったところ、以前、われわれがA.abruptaの子実体から単離したものと同一の(2S)-2-アミノ-5-クロロ-6-ヒドロキシ-4-ヘキセン酸であることが明らかになった。ただし、A.abruptaの場合は、C5のアミノ酸を多量に含む点が本菌と異なっている。両菌は外見を著しく異にするが、精密な形態学的特徴には共通点も多い。 以上述べたように、まだ例数が少なく確定的なことは言えないが、当初の予想はほぼ裏付けられたと考える。
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