1.これまでに記載、あるいは記録されたフィジ-諸島産のホウオウゴケ属(Fissidens)のほとんどすべての標本(約200点)を世界各地の標本庫から借覧し、研究した.同時に広島大学の隠花植物調査隊(責任者岩月善之助)の採集した約200点の標本を詳しく研究した結果、この地域から28種のホウオウゴケ属の種を確認した(論文4). 2.これまでに報告されたアジアとオセアニアのホウオウゴケの分布を詳細に研究し、比較した.その結果フィジ-とニューカレドニアのホウオウゴケ属は大変よく似ているが、フィジ-にはニュウカレドニアに記録されていない4種が生育することがわかった(論文1). 3.ニューカレドニアにちかいヴァヌアツのホウオウゴケ属はこれまでわずかに4種のみが記録されていた.今回広島大学隠花植物調査隊が採集した標本を研究した結果、15種を確認した.過去の記録の元になった標本も世界各地の標本庫に連絡して、借覧した結果、この島から記載された1種は他の種の異名となり、他の1種の記録は疑わしいことがわかった(論文3). 4.世界に約900種が記載されているホウオウゴケ属のうち、Subgen. Serridium(C.Muell.)Iwats.は最も多様性に富んだ群である.今回この亜属のうちのAmblyothallia節について研究を行なった.まず、この節の選定基準種をFissidensasplenioides Hedw.と定め、この節に含まれるすべての種(19種)とそれらの異名を整理した.この結果、この節をSubgeni FissidensからSubgeni Serridiumに移し、新組み合わせ2を提案した(論文2). 以上の結果、これまで分類学的に混乱し、分布のデータも乏しかったアジア・オセアニア地域のホウオウゴケ科の知識が著しく追加され、蘚苔植物の分布と種分化について多大の寄与ができたことと信じる.今回の成果をもとに、さらにホウオウゴケの研究を続けていく予定である.
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