研究課題/領域番号 |
06640924
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
榎本 知郎 東海大学, 医学部, 助教授 (80056316)
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研究分担者 |
松林 清明 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (50027497)
長戸 康和 東海大学, 医学部, 専任講師 (30056345)
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キーワード | ニホンザル / 加齢 / 精巣 / 精子形成 / アポトシス / 性行動 |
研究概要 |
今年度は、加齢に伴う精巣の精祖細胞、精子形成細胞、セルトリ細胞の微細形態の変化を、組織化学的に、また、光顕・電顕の同一切片対比観察法によって検討した。 精巣標本は、平成6年度に採取したものを使用した。すなわち、交尾期と非交尾期において、ニホンザルの老齢ザル(19歳以上)からバイオプシーによって2x2x2mm程度採取したものである。 対比観察法を用いた検討の結果、老齢個体の精巣では、精上皮の周期性が乱れており、周期的な精子形成がもはや行われていないことが示された。精子細胞も加齢に伴う変化を見せており、先体小胞内にある先体顆粒の小型化、電子密度の低下、欠如、先体形成の遅延など、先体形成が不完全になる傾向が示された。セルトリ細胞の基底部には、脂肪滴が細胞質に充満し、セルトリ細胞間のtight junctionが見られず、血液精巣関門がすでに破壊されていることが明らかになった。 さらに、精巣標本をTUNEL法によって処理し、共焦点レーザースキャン顕微鏡を用いて、精上皮のアポトシス像を観察した。その結果、各ステージの精子形成細胞、精祖細胞、セルトリ細胞、筋様細胞に、それぞれアポトシスを起こしている細胞が認められた。しかも、必ずしも形態的に変化している細胞に一致しなかった。つまり、形態的には正常に見える細胞の中にも、アポトシスを引き起こしているものがあることが示された。 これらの結果から、ニホンザルの老齢個体では、精細管に精子形成細胞が認められる場合でも、精子形成を活発に行う環境にはなっていないものと考えられる。しかし一方で、性行動には顕著な変化が認められない。したがって、老齢ザルは、繁殖という観点からは役割を終えてからも、性行動を変わりなく続けていると結論できる。
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