カニクイザルのalha-グロビン領域に見いだされたプロセスト遺伝子P117がいつ頃挿入されたかを検討するため各種霊長類のDNAよりP117をPCR法にて増幅した。ヒト、チンパンジー、テナガザル、カニクイザル、フサオマキザル、コモンマーモセット等では高濃度で増幅されたが、原猿類のスローロリス、ワオキツネザル、ツパイでは少量しか得られなかった。しかも原猿類では真猿類よりも若干長いバンドが得られ、プロセスト遺伝子としての存在の仕方が原猿類では異なることが示唆された。PCRで増幅されたDNAを低融点アガロースゲルで分離し、ガラスパウダーにて精製しFITCプライマーを用いてオートシークエンサーによる方法を検討したが、試料を多く必要とするため断念した。次にγ-^<32>P-ATPで末端ラベルしたプライマーを用いて手動で配列決定を行ったところ、ヒト上科、新世界ザルの塩基配列を決定することができた。新世界ザルのフサオマキザルはヒトと比べ13塩基短かった。またヒト上科のチンパンジー、テナガザルの塩基配列はカニクイザルのP117と非常によく一致していた。いずれもPCR法により増幅したDNAの配列を決定しているため、少量のDNAの混入によるものでないことを確認するため再度配列を決定しつつある。また、少量しか増幅されない原猿類の配列を有効に決定するため、ダイナビーズ法による1本鎖DNAの精製法を検討中である。 さらにヒトおよびカニクイザルのDNAをEcoRI、BglII、XbaI等で切断しサザンハイブリダイゼーションを行うといずれにも二本バンドが検出された。従って本来の遺伝子とプロセスト遺伝子も含めて少なくとも二組の遺伝子座があることが明かとなった。最も長い制限酵素断片を精製し、さらに各々の断片の制限酵素地図を作成中である。
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