今年度は、Pb系酸化物超伝導体において、ユニットセル中にCuO_2層を1層有するPb3201相と、CuO_2面が2層であるPb3212相について研究を行った。 〈Pb3201相〉まず、Pb_2Sr_<2-X>La_XCu_2O_<6+δ>の単相試料を得るために、錯体重合法を用いて種々の作成条件で合成を試みた結果、La濃度x=1.1のみで単相の試料を得られることがわかった。この良質な焼結体試料を用いて、過剰酸素量δの変化による種々の物性変化から、3201相における過剰酸素の役割を調べた。電気抵抗率、格子定数、PbやCuの平均価数等の測定結果より、δ〜0.3までは超伝導を担っているCuO_2にキャリアであるホールが供給さる。δがそれ以上になると、ホールは超伝導にあまり関係していないブロック層に供給され、、その際、CuO_2面のホールもブロック層に移動していくことがわかった。〈Pb3212相〉本研究の一つの目的は、3212相の単結晶を作製し、固有の物性を測定することであった。まず、単結晶育成手法の確立のため、NaClとPbOをフラックスとする徐冷法で育成を行い、この系で最高のTcを示す組成であるPb_2Sr_2Ln_<0.5>Ca_<0.5>Cu_3O_8単結晶(Tc【tautomer】0K)の育成手法を確立した。次に、固有の物性を測定するため、電気抵抗の温度依存、磁場中電気抵抗の角度依存等の測定を行った。その結果、異方性の値:γは約12となり、Y系超伝導体とBi系超伝導体の中間の値となった。これより、異方性の大きさには、CuO_2面間距離よりもc軸方向の電子的結合が効いていることがわかる。 他方、Pb3223相の合成は現在研究中である。
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