研究概要 |
電荷移動型絶縁体-金属転移を示す系として、高温超伝導酸化物、パイライト型Ni(S,Se)_2を主な対象として、金属絶縁体転移の臨界領域での電荷の輸送現象の考察を行った。高温超伝導酸化物では、系の二次元性が特徴的に現われる面間の伝導を集中的に研究し、金属絶縁体転移に向けて、何らかの理由で面間の伝導が積極的に抑えられる。電荷の閉じ込めが起こっていることを実験により明確にした。さらに、この電荷の閉じ込めは、系のスピン励起と密接に関連していることが強く示唆された。すなわち、YBa_2Cu_3O_yでは、面間の伝導が低温に向けて絶縁体的なふるまいを見せ始める温度は、その正孔濃度依存性まで含めてスピン励起にギャップが生じる温度とよく一致している。 Ni(S,Se)_2は、SとSeと固溶の関数として、反強磁性絶縁体、反強磁性金属、常磁性金属とその姿を変えていく。電気抵抗、ホール効果、比熱などの基本的物性を組織の関数として系統的に測定した。その結果、常磁性金属相では絶縁体に向けて単調な有効質量の増大が観測されるが、いったん反強磁性秩序が生じると、電子比熱係数の減少やホール効果の異常など、単に有効質量の増大だけでは説明できない振る舞いがはっきりと顔を出すことが判明した。これらの振る舞いには、二次元での反強磁性相関と三次元の反強磁性秩序という違いを別にすれば、高温超伝導体の金属絶縁体転移との共通因子を多く見い出すことができる。この観点から、得られたデータの解析を進めており、近く出版予定である。
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