真空蒸着重合法における薄膜形成過程について、モノマー分子の付着挙動並びに分子配向挙動の観点から考察した。簡便な水晶振動子法を用いることにより金及び銀基板上への付着量を測定し、その時間変化から平均基板滞在時間を求め、さらに基板温度依存性から吸着エネルギーを求めた。また官能基で表面を被覆した活性表面上に分子が吸着する場合には化学結合により付着する化学吸着と分子間力などの物理的な力により付着する物理吸着の両者による吸着層が形成した。2種類のモノマー分子を交互に蒸着した場合には付着量の階段状増加が観測されたことから、GaAs超格子のような交互層の形成が推察された。 1.付着量変化の測定の結果から、2種類のモノマー分子を交互に蒸着することによりそれぞれの単分子層が形成し、かつ化学的結合していることが確認された。また、重合反応によって生じた高分子主鎖は基板に対して垂直方向に配向していることが赤外線吸光分析の結果から明らかになった。 2.分子の基板上への付着は、強く吸着した化学吸着と、弱く付着しており再蒸発しやすい物理吸着の2種類に分類できることが示され、モノマーの種類、基板の種類、基板温度の差異によって物理吸着と化学吸着の共存形態が変化することも明らかになった。 3.物理吸着における付着量の時間変化から平均基板滞在時間を求めることが可能になり、様々な基板種類、基板温度における滞在時間を求めることができた。また平均滞在時間の基板温度依存性から吸着エネルギーを求められることもできた。
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