研究概要 |
出来る限り、非ダイヤモンド成分、ダングリングボンドなどの欠陥の少ないダイヤモンド薄膜を合成することを目的として、静かなプラズマ条件でのダイヤモンド堆積の実験を試みた。用いた装置は、管径が35mmの石英反応管の周りに2つの電極をもつ容量結合型の高周波(13.56MHz)プラズマCVD装置で、基板温度を制御するために赤外線ヒーターを外部に備えている。エチルアルコールと水素を原料として、500Wの一定の放電電力のもとで、総ガス圧力、エチルアルコール濃度、基板温度などをパラメーターとして、種々の製膜を行った。得られた膜はラマン分光,SEM,ESRによって評価した。その結果、以下の事が明らかになった。 1、総ガス圧力は1〜3Torr、エチルアルコール濃度は1〜3%、基板温度は550〜600℃の範囲で、非ダイヤモンド成分の殆ど無い良質なダイヤモンド膜が得られる。 2、350℃の低温でもダイヤモンドが析出するが、非ダイヤモンド成分の含有もある。この膜のSEM像によると、膜は多重双晶のボール状の粒子より構成されている。 3、小量の4弗化炭素を加えると、350℃でも自形面が明瞭で、非ダイヤモンド成分の無い良質のダイヤモンド膜が得られる。この場合、最良の4弗化炭素濃度は0.2%である。 4、4弗化炭素を加えると、基板温度が600〜350℃の範囲で良質のダイヤモンド膜が得られる。 5、ダングリングボンド密度は通常は10^<18>〜10^<19>cm^<-3>であるが、ここで述べた高周波CVD装置を使って作製した膜では10^<18>cm^<-3>である。また、4弗化炭素を加えて作製した良質膜では6×10^<17>cm^<-3>と、最も少なくなっている。
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