本研究ではクロライドマルチソースエピタキシャル法によりGaAs(100)基板上にCuGaSe_2をc軸エピタキシャル成長させ、化学量論比の制御と外因性ド-ピングによって物性制御を行った。 アンドープ結晶は抵抗率が10^<-3>〜10^2Ω・cmのp形伝導を示した。過剰Seが補償ドナーとして働くためにSe/(CuCl+Ga)供給比を増大すると抵抗率は上昇した。低CuCl/Ga供給比で低抵抗化したが、これはCu空位がアクセプタとして働くためである。キャリア密度の温度依存性からアクセプタ準位を180meVと決定した。 Znドープ結晶では抵抗率が2×10^<-3>〜10^1Ω・cmのp形伝導が得られた。原料供給比依存性とキャリア密度の温度依存性の実験から、ZnはGa位置に入って深さ130meVのアクセプタ準位を作ることがわかた。低CuCl/Ga比ではZnがCu位置に入って補償ドナーとなる。Cu位置に選択的にドープしてn型結晶を得ることには成功しなかった。 窒素を高周波プラズマで活性化してドープした。窒素ドープ結晶もp型伝導を示したが、アンドープやZnドープ結晶と異なり、顕著な不純物伝導が観測された。また180meVアクセプタに加えて40〜50meVのアクセプタ準位の発生が観測された。 成長層と基板物質の間の格子定数および熱膨張係数の不整合のためにエピタキシャル結晶中に発生する格子歪を詳しく調べ、カルコパイライト結晶の一つの特徴である正方晶歪がバルク結晶に比較して2倍の大きさであることがわかった。この歪に対応する帯間遷移エネルギー変化を確認し、価電子帯のスピン軌道分裂を230meV、結晶場分裂を-150meVと決定し、バルク結晶と比較検討した。
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