研究概要 |
コバルト内包ナノカプセルの合成には,金属Coを詰め込んだ炭素棒(コンポジット棒)をヘリウムガス中で直流アーク放電により蒸発する方法を用いた.本研究では,Heガス圧のほかコンポジット棒のCo/C比を系統的に変えて内包型Co超微粒子を合成し,その構造・形態および磁気特性について以下の成果を得た. 1.Co微粒子の結晶構造と粒径 内包されたCo超微粒子はfcc構造のβ‐Coが常に支配的であり,熱処理を施してもhcp‐Coへは変態しなかった.内包型Co超微粒子の粒径はHe圧力の増加に伴い,単調に増加した(50Torrでは平均粒径180Å,500Torrでは250Å). 2.保磁力Hcの粒径依存性 平均粒径が180Åから210Åに増加すると,Hcは640 Oeから300 Oeに急激に低下したが,これを超えて粒径が増大(測定した最大粒径は260Å)してもHcはほとんど変化しなかった.これは,約200Å以下のCo微粒子は単磁区構造であることを示唆する. 3.コンポジット棒のCo/C比の効果 コンポジット棒の全断面積に占めるCo充填穴の面積が16%以上あれば,合成された内包型Co微粒子の単位質量当りの飽和磁化Msはバルクの値の88%以上あった.バルク値より小さいのは,個々の微粒子を包む非磁性のグラファイト層の存在のためである.このグラファイトの外皮によりCo微粒子は保護され,800℃まで加熱しても,酸化や粒子間の融合は起きなかった. 4.飽和磁化Msと保磁力Hcの温度変化 グラファイトで保護されたCo微粒子のMsは概ねバルクと同様の温度変化を示した.Hcは温度の上昇とともに単調に減少する可逆的変化を示した.
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