材料ガスとして三塩化ホウ素と窒素を用い、窒化ホウ素の合成をプラズマアシスト気相成長法により試みた。窒素のリモートプラズマの生成、および基板へのバイアス印加ができるようにリアクターの作製を行った。材料ガス流量比、基板温度、基板に印加するバイアスを変化させて、シリコンおよび多結晶ダイヤモンド基板上への窒化ホウ素薄膜の成長実験を進めた。得られた薄膜の結晶学的評価、光学的・電気的特性評価を行い、以下の成果を得た。 (1)原子間力顕微鏡による表面観察、および透過電子顕微鏡による格子像の観察からシリコン基板上での成長初期段階では3.5nm程度の粒子サイズをもつ微結晶の生成が確認された。更に、膜厚が250nm程度の薄膜表面上では20nmx200nm程度の結晶粒の存在が認められた。 (2)透過電子線回折信号、および赤外光吸収スペクトル測定において観測される1380cm^<-1>と800cm^<-1>のピークより六方晶窒化ホウ素薄膜の堆積が確認された。更に、透過電子線回折信号の強度変化より立方晶窒化ホウ素の混在を示唆する結果も得られた。 (3)光透過スペクトル測定より禁止帯幅が5.5〜5.9eVであると評価された。 (4)得られた窒化ホウ素薄膜の電流-電圧特性を測定した。室温で10^9〜10^<11>Ωcmの電気抵抗率を有する無添加窒化ホウ素薄膜が得られた。電気抵抗率の温度依存性から求められる活性化エネルギーは0.76eVと評価された。 本研究では、当初の目的である立方晶窒化ホウ素薄膜の成長を目指し、立方晶窒化ホウ素の格子定数に近い格子定数を持つダイヤモンド基板上への成長も試みたが、本成長条件においては立方晶窒化ホウ素薄膜の成長には至らなかった。しかし、ダイヤモンドの禁止帯幅(5.5eV)より大きな値を持つ薄膜の堆積技術が確立できた。
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