研究概要 |
結晶表面層・薄膜結晶の詳細な結晶学的評価を行うために、まずX線二結晶法高精度自動測定系を構築した。本装置の製作に当たって、角度駆動制御系とX線検出系(波高分析器PHAと計数部)のハードウエアと測定操作用ソフトウエアを設計・自作している。機能としては、通常のロッキングカーブ測定(ωモード)と2θモード測定が可能であり、角度精度は、ωモードにおいて0.02秒、2θモードにおいて0.5秒となった。また、本装置は試料結晶の取り付け調整を正確、容易にするために、メーカ製の装置にはないつぎのような機能も備えている。(1)自動と手動両操作が可能である。(2)検出出力をCRT画面上に表示できる。(3)音声出力を取り出すことができる。この測定系のハードウエアおよびソフトウエアの詳細は、応用物理、65、732(1996)および研究成果報告書に記述した。 本装置を用いていくつかのヘテロエピタキシャル膜の結晶学的評価を行い、次の知見が得られた。 (1)マイクロ波MOVPEによって(0001)α-AL_2O_3基板上に成長させたAl_xIn_<1-x>Nエピタキシャル層の構造とエピタキシャル関係を測定した。構造はウルツ鉱構造でありa軸格子定数とc/a比が組成xの増加とももに減少すること、エピタキシャル関係は(0001)Al_xIn_<1-x>N//(0001)α-Al_2O_3および[1010]Al_xIn_<1-x> N//[1010]α-Al_2O_3であること、がわかった。 (2)ZnSe/GaAs(100),InGaP/GaAs(100),cap-GaAs/InGaP/GaAs(100),cap-GaAs/AlGaAs/GaAs(100)ヘテロ構造をX線二結晶法で調べた結果、結晶性の優れた成長膜の場合にのみロッキングカーブに強度振動が観測された。これはX線の動力学的回折効果に起因している。 (3)最近、結晶表面でのX線の全反射測定が可能となり、今後結晶表面層の評価に応用したい。
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