初年度は、装置の整備、成長条件の探索、成長膜の構造解析と電気伝導度の測定を行った。 1.装置の整備.本研究で使用する、加熱時にも電気伝導が測定可能な、傍熱加熱型試料ホルダーと可動探針電気伝導度測定装置を組み込んだRHEED装置の真空排気系に不具合が生じたので、最初に、排気系のオーバーホールを行った。続いて、本研究の備品であるSi蒸発用eガンの設計・製作、ならびにCaF_2の蒸発源の製作を行った。予算が限定されていることから、PBNるつぼの代わりにタングステンバスットを用いてCaF_<2F>の蒸発を行った。この方式でも、本研究に必要な、蒸発速度の制御などが行えることが確かめられた。 2.CaF_2/Si(III)膜の構造解析と電気伝導度測定.成長膜の構造をRHEEDにより調べた。基板温度を600℃程度にすると、CaF_2/Si(III)膜がエピタキシャル成長することが確かめられた。スポットが比較的シャープであること、成長膜からの菊池パターンが観察されることから、平坦で良好な結晶性を持つ膜が成長することが確かめられた。成長初期、1〜2分子層の蒸着で、表面積構造が7×7から1×1へ変化することが分かった。また、菊池パターンの変化から、成長膜の結晶方位は、基板結晶と〔112〕方向が反平行の、タイプBの成長をしていることが確かめられた。表面に探針を接触させ、膜に垂直な方向の電気抵抗を測定した結果、測定回路の入力インピーダンスの25MΩよりも大きな抵抗を持つことが確認され、CaF_2膜状に成長させた超薄膜の電気伝導度を、基板から絶縁された状態で測定できることが分かった。また、本実験を通じて、成長膜の電気伝導測定には、現在の可動2探針の4端子法でなく、可動4探針法での測定が望ましいことが判明したので、次年度に製作する加熱冷却試料ホルダーの設計に取り入れることとした。
|