昨年度に引き続く装置整備として、加熱と冷却の双方が可能な試料ホルダーを製作した。加熱は、試料のシリコンへの直接通電と、ヒーターシリコンからの放射による傍熱の、両方式(の併用)が可能である。冷却は、試料ホルダーと液体窒素タンクを銅箔の束でつなぎ、熱伝導で冷却する方式を採用した。試料の片側の温度を測定したところ、100K程度まで冷却できることが確かめられた。冷却中、4端子法における電位測定の2端子の接触点の温度に差があるため、計算される電位差に、熱起電力の差が重畳されることが分かったが、I-V測定において、電位差の原点をずらす効果のみであり、電気伝導度の測定には支障がないことが分かった。 現在、装置の整備は完了し、シリコン薄膜の構造をRHEED法で、物性を4端子法による電気伝導度測定で調べている。中間絶縁膜のCaF_2は、シリコン基板の温度を600℃程度に保持することで、基板と反平行の方位でエピタキシャル成長させることができたが、その表面が安定であるため、電気伝導度測定が良好に行えるような、均一なシリコン薄膜を、エピタキシャル成長させることが難しく、現在、電子線照射によるCaF_2膜の表面改質を含め、さまざまな手法を試みている。良好な膜が得られ次第、電気伝導度測定による物性評価を行う予定である。 本研究では、RHEEDの入射電子ビームを走査することで、試料表面上の場所による構造変化の有無を確認したが、物性評価には電気伝導度測定用の探針を接触させる場所の局所的な構造やトポグラフをきちんと知ることが重要であることが分かった。そこで、本研究の発展として、探針の接触箇所の構造をSTMで調べて、特定の2点間の電気伝導を測定する「双探針STM法」の開発研究を開始した。これも本研究の成果と言えよう。
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