研究課題/領域番号 |
06650044
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
朝倉 利光 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (70001188)
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研究分担者 |
岡本 卓 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (40204036)
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キーワード | 多重散乱 / 後方散乱 / 光の弱局在 / コヒーレンス / フラクタル / 動的光散乱 / ブラウン運動 / 長距離相関 |
研究概要 |
多重散乱媒質からのコヒーレント散乱光の時空間特性を、さまざまなパラメータを用いて多角的に解析した。その結果以下のことが明らかとなった。 1.照明光の空間コヒーレンスを変化させたとき、後方散乱光に生じる強度ピークの高さおよび形状に変化が生じることを理論的に明らかにした。コヒーレンスの減少とともにピークの中心部分は低くなだらかになるが、すそ野の部分はほとんど変化しないことが示された。 2.媒質がフラクタル性を帯びた場合、後方散乱ピークにどのような変化が生じるかを理論・数値シミュレーションおよび実験により考察した。この結果、散乱体の巨視的密度を一定として媒質のフラクタル次元を減少させると、ピーク幅が広がり、中心部分は傾きがゆるやかになることが明らかとなった。また、その傾きと次元との関係が定量的に見積もられた。 3.高濃度の微粒子懸濁液からの散乱光は、粒子のブラウン運動によりその強度が時間的に変動する。このゆらぎの速さの後方散乱角依存性を数値シミュレーションおよび実験により明らかにした。強度ゆらぎは一般に逆反射方向に近づくにつれてゆっくりしたものとなるが、照射光と同一偏光成分の場合のみ逆反射方向で非常に速いゆらぎが観測される。これはこの散乱方向特有のコヒーレント干渉効果によることが示された。 4.強散乱媒質に特有の各種多重散乱現象を数値シミュレーションにより解析した。媒質内部での光波同士の干渉により、出射面上の散乱光強度分布は一般的に見られるガウス統計から逸脱すること、さらに前方散乱光では正の、後方散乱光では負の長距離相関が現れることがわかった。また、これら特異な相関が後方散乱ピークにも影響を及ぼすことが示された。
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