高濃度不規則媒質から多重散乱されたコヒーレントな光波の時空間統計特性を理論・実験・コンピュータシミュレーションにより解析した。 多重散乱体にコヒーレントな平面波を商社したとき逆反射方向に強度ピークが生じる現象、すなわち後方散乱エンハンスメントに関して多角的な研究が行われた。その結果、照明光の空間コヒーレンス、散乱光の偏光方向ならびに媒質中に分散した微粒子の直径が強度ピーク値および形状に及ぼす影響が明らかとなった。さらに、コヒーレンスへの依存性は角度スペクトル相関、粒径への依存性は位相関数および散乱次数分布を用いて評価できることが示された。また、微粒子のブラウン運動による散乱光ゆらきの動特性も解析され、逆反射方向で非常に速い強度ゆらぎが観測される原因が考察された。媒質が質量フラクタルの場合の強度ピーク形状についても調べられ、光子の散乱自由行程分布の違いにより均質媒質と異なる後方散乱強度パターンが生じることが定量的に示された。このフラクタル特有の自由行程分布を利用し、フラクタル媒質からのバリスティックな透過光強度を用いたフラクタル次元の推定法が提案された。 以上の結果は、ガウス統計に従う散乱光を生じさせる媒質に対して得られたものであるが、より多重散乱が強くなるとガウス統計から逸脱する散乱光が生じる。このような強散乱光の特性についても考察され、出射面上に負の強度相関が現れる、あるいは後方散乱ピークの高さが変化するなどの特異な現象が現れることが明らかとなった。 応用の観点からは、従来困難であったレーザー光による多重散乱流体の速度測定が、二波長相互相関法により可能となることが示された。
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