研究概要 |
等方性であるガラス材料に二次非線形光学効果が誘起されるメカニズムを説明するものとして、次の二つのモデルが考えられる.第一のモデルを以下に示す.まず,ガラス材料のseeding中に起こる基本波,第二高調波の多光子吸収過程によって光電子が生成される.この光電子が三次の非形線光学効果を介してファイバー中に生じているCD電場によって,ドリフトし,固定され,半永久的なDC電場をつくる.結果として,反転対称性が欠落し,二次の非線形光学効果が生じる.これに対して,第二のモデルは,光電子生成過程は第一のモデルと同じであるが,この光電子が電子の濃度勾配に応じて拡散し,格子欠陥に再トラップされる結果,CD電場が誘起されると考える.このDC電場がガラス材料中の反転対称性を破壊し,二次の非線形光効果が現れるというものである.現在,われわれは,この両者のモデルに基づき,既に報告されている実験結果の理論解析を進めている.過去に報告されているGeドープシリカファイバーの第二高調波発生効率に関してseeding時の基本波,第二高調波強度とseeding後のガラス試料から観測される第二高調波出力依存性の点で,後者のモデルによる理論計算の方が実験報告と一致することがわかった.現在,Ge-シリカガラス材料のseeding実験を行っているが,いまだ,第二高調波発生が観測されていない.試料のGeドープ量の最適化、seedingに要する時間に関する点について検討を行い,実験を進める予定である.また,理論計算からガラス内の多光子過程によって生成される光電子の生成確率がx^<(2)>の誘起に重要な役割を果たすことがわかった.したがって,多光子過程による光電子の生成準位と共鳴する波長付近の基本波を用いた場合には,大きな電気感受率を得ることができる可能性がある.
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