本研究は光通信および光情報処理等・光関連分野への幅広い応用が可能である高速光偏向技術の開拓を目指している。本年度助成期間に以下の結果を得た。 1.GaAs/AlGaAs導波路アレー型光偏向素子を用いた光スイッチ、光分波器を提案し、数値シミュレーションにより基本動作特性を明らかにした。(1)挿入損失3-8dB、クロストーク35dB以上の入力ポート32対出力ポート32のロータリ型の光スイッチが構成可能である。また、(2)1素子で、光分波型のスイッチを構成することが可能である。これは、波長間隔5nmで16波を波長多重した光を16の入力ポートに入れることにより、16の出力ポートに入力ポートのそれぞれ異なる16波長を組合わせた出力を得ることができる。これらは波長多重光通信の光交換機への応用が期待される。現在、最適な素子構造の検討を行っている。 2.高速偏向を行うためには、低電圧で、位相制御導波路の大きな屈折率変化を得ることが必要である。このため、GaAlAs多重量子井戸構造を有する位相制御導波路の製作を行った。導波路内での透過光領域での光の位相変化量はマッハツェンダー干渉計を用いて測定した。その結果、変化量はバルクの導波路に比較し3倍程度であった。これは予測した値より1桁程度小さい。これは、各層の膜厚のバラツキおよび急峻な境界が得られないことによる。 3.光分岐部に高分子2次元導波路を有する光偏向素子を製作した。製作した素子のGaAs/AlGaAs位相制御導波路は9本とした。この素子にパソコンにより制御した制御電圧を印加したが、偏向動作の確認が得られていない。導波路間の電気的絶縁が不十分であり、製作プロセス改善が必要である。
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