我々が提案する能動型画像処理方式やそのベースとなったモジュレーションスペクトロスコピーでは、変調に応じて画像や信号に対して数値型荷重付けや滞在時間型荷重付けによる荷重関数乗算の後、画像/信号の積分操作が行われる。この際最も良好なSN比を実現する両荷重付けの分担を求める事が能動型画像処理/モジュレーションスペクトロスコピーにおける最適荷重付け問題である。 平成6年度の研究では最も単純な、信号中の雑音パワーが外部変調に依存しない場合の厳密解を得た。これによればいかなる数値荷重と滞在時間荷重の組み合わせよりも単純に滞在時間荷重のみを適用した方がより高いSN比を得る事が示される。引き続き、一般的に雑音パワーが外部変調に依存する場合のSN比を評価する目的でハードウェアー信号・雑音シミュレーターを試作する予定であったが、より自由度の高いシミュレーションを行う目的でワークステーションを用いたシミュレーションプログラム作成に変更した。平成7年度にはこのソフトウェアーシミュレーターを利用して様々な雑音パワーの依存関係に対するSN比の比較を試みた。同時にこれと平行して厳密解導出の試みを継続した結果、雑音パワーが外部変調に依存しない場合の解析の延長でSchwarzの不等式により、「数値荷重を適用後の雑音パワーが外部変調に依存しないように、まず数値荷重を定め、残りの荷重を滞在時間荷重で補う」事が最適解であると示された。この重要な結論は先にシミュレーションによっても確認されている。 現在これらの成果を元に、実用的な応用として「透過型電子顕微鏡における最適化実時間球面収差除去」に関する研究を開始した。さらに画像ではないが時系列信号を対象とする「モジュレーションスペクトロスコピーにおける最適化変調/荷重付けシステム」の実現を目指した基礎的研究を行いつつある段階である。
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