本研究は、二次元的広がりをもった試料の分光測定による蛍光化学種の同定とその化学種毎の濃度分布計測において、スペクトル情報の他にさらに蛍光寿命情報を追加することにより演算処理の精度・速度を飛躍的に向上させた新しい分光分析法ならびに装置の提案と開発を目的とするものである。 本年度は主に測定時間の大幅な短縮をはかりかつ分光強度パターンと蛍光寿命パターンを同時測定するため光源変調と光電検出器利得変調方式を併用した検出器内部へヘテロダイン検出装置の試作を行い、その装置の動作確認と基本性能の測定を行った。 まず、イ)撮像型光電検出器、ロ)レーザ、ハ)AO変調器、ニ)変調用水晶発信器、ホ)タイミング回路、ヘ)電子シャッター付CCDカメラ、ト)パソコンからなる装置の試作を行った。レーザとしてはアルゴンイオンレーザを用い、AO変調器により正弦波変調を行い、蛍光試料を変調励起する。この変調信号とわずかに異なる変調信号で光電検出器の利得変調を行う。CCDカメラとの同期の関係上、この差周波数は30Hz程度とした。この結果光電検出器からは差周波数で変調された蛍光画像信号が出力される。この蛍光画像信号をパソコンに取り込み、蛍光の位相成分と強度成分を演算処理した。 測定システムの性能・精度は同期の精度によって大きく左右される。電子シャッター付CCDカメラと、光源ならびに光電検出器用変調差信号との同期をとるため、タイミング回路を試作した。光源変調信号と光電検出器利得変調信号を高周波ミキサ-に入力し、これに後続したロ-パスフィルターにより差周波数信号(正弦波)をとりだす。つぎにこの信号のゼロクロシング時刻に鋭い時間基準パルスを発生させた。この結果計測システムの位相分解能として、0.5度以下を得た。アクリジンオレンジ等標準蛍光試料により、1ns以下の分解時間を確認した。
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