本年度は測定された時間分解および位相分解蛍光分光画像から、二次元試料中の蛍光化学種の濃度分布の演算を目的とした解析法、特に強度比マトリックス分析法(Ratio Method、RM法)について検討した。 RM法は、複数個の蛍光化学種を含んだ溶液の蛍光-励起マトリックス(Emission-Excitation Matrix、EEM)蛍光分光データから、溶液中の化学種の個数と各々の濃度を演算する手段として用いられている。このRM法は溶液試料を対象としたもので、複数の化学種を含み、しかも各化学種の濃度分布が二次元の広がりを持った生物蛍光試料については直接応用できない。 二次元分布をもった蛍光試料にRM法を応用するにあたっては、化学種の空間的な分布を一定のまま保ち、かつ濃度分布の異なった数多くの試料を用意しなければならない。これは現実には不可能である。この問題を解決し、実際の一個の試料のみで、化学種の分布を一定のまま保ちかつ数多くの強度の異なるセットを生成するため、ヘテロダイン検出における位相の遅れまたは時間的な位相(ゲート法)による蛍光信号強度の変化を利用する方式を考案した。 インテンシファイヤーの利得変調方式を用いた二次元ヘテロダイン蛍光画像では、各時刻における画像情報がパソコンに格納されているため、フレーム積分時刻をずらすことにより異なった位相の蛍光画像が生成できる。一方イメージディセクター方式では、ヘテロダイン検出の移相器の位相を変化させて画像をコンピュータに取り込むことで、またタイムゲート法においては、単にゲート時刻を変化させて時間分解画像を取り込むことにより必要な個数のセットを生成できる。
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