本研究は、極高真空(圧力が10^<-10>Pa以下の超高真空)を測定するための真空計の開発をめざすものである。この領域では熱陰極型電離真空計が有望であるが、極高真空では熱電子がイオンを発生させる確率が小さくなるために測定が困難であるばかりでなく、無駄に陽極を衝撃する電子が熱やX線を発生して測定が妨害される。本研究では、特殊な電極構造(直列静電レンズと凹面鏡電界)によって電子に往復振動をさせ、電子の飛行距離を長くして、信号対雑音比を改善している。 充分な計算機シミュレーションにもとずいて製作した第1号試作電極による予備実験では、比較的広い動作条件範囲で、容易に、安定に、80Pa^<-1>以上の感度が得られた。これは、従来のほとんどの熱陰極型電離真空計の感度(0.1〜0.4Pa^<-1>)のおよそ400倍で、この段階でも、この真空計が従来のおよそ400分の1の圧力を測定できる事が示された。しかし、極高真空領域では、電極などからの微量の脱ガスが厳しく影響するために、電極の加熱脱ガス等に1ヵ月以上を必要とする事が重要な弱点であった。 平成6年度には、細線による多数のリング状電極で直列静電レンズを形成せしめた新しい真空計電極を試作した。そして脱ガスの際にはこれらの電極を直列接続して通電加熱ができるようにした結果、脱ガスのための所要時間は数十分に短縮された。しかし、この電極では感度が充分でなかったので、これをさらに改善する方向で新しい電極構造の設計にとりかかった。 また実験と平行して、電極の組立精度の不十分さが電子軌道に与える影響について計算機シミュレーションによる確認を行った。
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