研究概要 |
本研究は、フラクタル次元測定の実測データに誤差解析の手法を導入しその有用性を立証することを意図していた.以下の点で有意義な成果が得られた: 1.Mandelbrotにより提案されている最も基本的な一次元点パタンでのフラクタル次元測定において,漸近的に最適だがロバストでない方法,並びに通常用いられている方法で,誤差評価を解析的に導いた.これは,この種の誤差評価の初めての実例である. 2.株価変動が長期の系列相関に起因するフラクタルであるか否かは従来からの未解決問題である.これに関連して,株価変動において「平均回帰」が実際に見られるかどうかをまず検証した.この過程で「平均回帰」を含む系列相関を効果的に検出する新手法を開発した.この手法を株価系列の実データに適用して,株価指数・個別株価において,ともに,「平均回帰」の存在が検証された. 3.「平均回帰モデル」を実現するモデルの考案の過程で,通常の(異なる)株価指数が,株価補正後も大きく異なる可能性があることが判明した.これは,フラクタル以前の問題として,深刻な問題を提起している. 4.「長さ測定」からのブラウン運動のフラクタル次元の測定誤差を理論的に算出した.これは高安が計算した「近似版」のに対する「厳密版」となっている.これに関連して「長さ」の測定のみから,海岸線が「フラクタル」検証を行うのは危険である. 5.この「長さ測定」に関連し,全く異なった分野であった「デジタル幾何」との関連が明らかになった.
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