境界要素法は、境界のみを離散化すればよい、開放領域が扱いやすい等の利点から、近年工学で有力な偏微分方程式の数値シミュレーション手法として定着してきた。しかしながら、解決すべき数値解析上の問題も多い。その中で今年度は、1.数値成分の高精度化、2.連立一次方程式解法の高速化、について検討した。 1.数値積分の高精度化 境界要素法で薄い構造や、境界付近での場を計算する際に生じる近特異積分(有界ではあるが、急激に変化する関数の積分)に対して、筆者らは近特異性を適切な変数変換によって緩和してから積分する手法を開発して来た。 しかし、従来の手法はGauss-Legendre法に基づいていたため、自動積分に向いていなかった。そこで今年度は、この変数変換手法に精度保証つきの自動積分の昨日を持たせるため、(動径方向の積分に対して)台形公式に基づいた新たな変数変換(logL_2-DE変換)を開発し、その有効性を数値実験及び理論誤差解析により検証した。 2.連立一次方程式解法の高速化 境界要素法では、密行列を扱うので直接法を用いるのが常套手段であるが、要素数nが大きくなると計算量(n^3)・記憶量(n^2)が莫大になり、実用化において問題になっている。そこで、従来の直接法の代わりに反復法を用いる事に着目し、更に高速化するため、遠い要素間の影響に近似的に取り扱うクラスタリング法を検討した。この手法はポテンシャル問題に対しては知られているが、これを2次元静弾性問題に適用する方法の開発に成功した。これにより、計算量・記憶量は共にn log nで済み、従来不可能だったワークステーション上での3000要素の計算に成功した。
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