極性不均質熱弾性論の構築とその多孔質傾斜機能材料の数理熱応力解析への応用

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06650079
• 研究機関: 岩手大学
• 研究代表者: 菅野 良弘 岩手大学, 工学部, 教授 (90089160)
• キーワード: 不均質熱弾性論 / 不均質熱伝導論 / 傾斜機能材料 / 熱応力 / 温度場 / 熱応力緩和 / 材料組成設計

研究概要

傾斜機能材料の熱応力緩和に最適な材料組成を探索するため、偶応力による熱応力緩和に注目し偶応力の考慮された不均質平面熱弾性問題の定式化を行った。しかし、傾斜機能材料の任意の不均質性と偶応力理論の複雑さから得られた基礎微分方程式を解析的に解くことはできなかった。そこで、最も熱応力緩和が要求されている傾斜機能材料の高温側セラミックス100%層の亀裂生成とその合体による剥離に注目し、この原因を究明するため亀裂の生成に関わる面内応力とその合体に関わる面外応力を導出できる傾斜機能材料の3次元熱応力解析法の研究にとりかかりこれに成功した。この解析結果から加熱時の定常状態近くで生じるセラミックス100%層の最大引張熱応力は、セラミックリッチな材料組成分布を与えることにより、線形組成分布やセラミックプアな組成分を与えた場合のそれより50%以上緩和できることがわかった。次に、実際のスペースプレーンの使用環境から傾斜機能材料が繰り返し熱負荷(熱サイクル)を受けることにから熱衝撃試験が行われていることに着目し、断続的な熱負荷を受ける傾斜機能平板の温度場・熱応力場を、時間的に一定の熱負荷を受ける場合の解から比較的容易に導出する方法を提案した。そして、傾斜機能平板の材料組成分布を線形組成分布やセラミックプアな組成分布を与えた場合には熱サイクル数の増加とともに急激に加熱面(セラミックス100%層)において引張熱応力が増大するのに対してあるセラミックスリッチな材料組成を選択すると、この引張熱応力を大きく緩和できることを明らかにした。また熱衝撃に適した傾斜組成を明らかにするために、熱衝撃を受ける傾斜機能平板の熱応力解析を特性曲線法により行った。反射波の影響のため常に圧縮熱応力または引張熱応力のどちらかだけを受けるとかができないので、準静的問題のようにセラミックスリッチな材料組成を選択すれば十分設計条件を満足するとは言えないがやはり全般的にセラミックリッチな材料組成によって熱応力緩和が期待できることがわかった。その他、気孔の存在による強度の低下と熱応力緩和の一方策として考える総合的な立場から、FEM法を感度解析法による傾斜機能材料の材料設計手法についても一部論文の掲載が確定し、また投稿を準備しているものもある。偶応力を考慮した極性不均質熱弾性問題の解析については、定式化された基礎微分方程式の数値解法により引き続き研究する所存である。

研究成果

• [文献書誌] V.F.Poterasu,K.Tanaka and Y.Sugano: "Stochastic FEM Formulation of Thermoelastic Behavior in Functionally Gradient Materials" Memoris of Tokyo Metropolitan Institute of Technology. 8. 83-88 (1995)
• [文献書誌] 渡辺宏一,筏尚武,田中喜久昭,菅野良弘: "セラミックス-金属系傾斜機能材料の熱弾性設計-大局的応力緩和の方法-" 1994年度傾斜機能材料論文集. 7. 9-14 (1995)
• [文献書誌] 須見尚文,菅野良弘: "材料定数の温度依存性が考慮された傾斜機能平板の動的熱応力解析" 日本機械学会論文集(A編). 61. 2296-2301 (1995)
• [文献書誌] 菅野良弘,佐藤恵一,木村範貴,須見尚文: "不均質平板の非定常熱応力の三次元解析" 日本機械学会論文集(A編). 62(3月号-印刷中). (1996)
• [文献書誌] 菅野良弘,佐藤恵一,須見尚文: "断続的な熱負荷を受ける傾斜機能平板の非定常温度分布と熱応力" 日本機械学会論文集(A編). 62(掲載-決定). (1996)
• [文献書誌] K.Tanaka,H.Watanabe,Y.Sugano,V.F.Poterasu: "A Multicriterial Material Tailoring of a Hollow Cyliuder in Functionally Gradient Materials : Scheme to Global Reduction of Thermoalastic Storesses" Computer Methods in Applied Mechauics and Engineering. (in press). (1996)