【1】解析の準備と解析モデル 孔版印刷機中のインクの流れのメカニズムを解析的に明らかにするため、まず、その数理的数値的解析の基礎となる印刷機の諸元の測定・各部材料やインクの物性定数の測定を行った。また、実際の孔版印刷機の印刷状況を観察し、インク移送のメカニズムについて検討し、流体で飽和した多孔質弾性層というモデルを提案した。 【2】モデルに基づく解析 スクリーンとマスターをインクで飽和した単一の多孔質弾性層と見なし、この多孔質層の力学的挙動を解析した。その結果、次の結論を得た。 (1)インクを含んだスクリーンとマスターの力学的挙動は、4つの無次元パラメーターによって支配される。 (2)プレスローラーによるインクで飽和した多孔質弾性層の圧密によるインクの絞りだしが、種々のインク移送のメカニズムの中で、重要な(または、支配的な)役割を果たしている。特に、プレスローラーによる圧迫時間が短いときには、支配的である。 (3)プレスローラーの接触圧が減少してゆく段階で、マスターへのインクの吸い戻しがある。これは、圧密された多孔質弾性層の弾性回復が原因と考えられる。 (4)プレスローラーによる圧迫時間が多孔質弾性層の特性時間よりやや短いとき、および、プレスローラーのオフセット量が多孔質層の上面のインク圧のピークの前方へのずれにおよそ等しいとき、マスターから印刷紙へのインクの移行量が最大になる。 【3】今後の計画 以上により、孔版印刷機におけるインク移送メカニズムを解析的に取り扱う枠組みを設定できたので、インク移送に及ぼす種々の因子について今後解析し検討を加えて行く。
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