対流のあるマグマ内に設置された熱抽出システムの熱交換部周囲に形成された外径の大きさが変化しない固化域内の応力場を明らかにした。構成法則としては次のようにした。すなわち、一軸状態でのクリープひずみの応力依存性についてはNorton則を用い、応力のべき乗に比例するとした。クリープひずみの時間依存性については、第二期クリープを想定して、線形関係を置き、また、温度依存性については、Arrhenius則を採用した。さらに、多軸応力下に対しては、クリープポテンシャルとして、偏差応力の第二不変量を用いた流れ則を適用し、これに前述の一軸応力-ひずみ関係を与えて、三種の岩体すなわち、花崗岩、斜長岩及びカンラン岩の構成関係式とした。その結果、以下のことが明らかになった。(1)固化域内周部内では応力は岩種によらず、固化域外径が小さいときには鉛直方向垂直応力が周方向垂直応力よりも引っ張り側に、外径が大きくなるにつれて周方向応力が鉛直方向応力より引っ張り側になる。従って熱抽出に有効な周方向の引っ張り応力が生じるためには、固化域外径が大きくなることが不可欠となる。 (2)各応力は設置深度に比例して圧縮側へ向かうので、破砕帯を生じさせるためにはシステムをなるべく浅部に設置すべきである。(3)花崗岩質クリープ特性を有する場合には固化域内に常に圧縮応力が作用しているが、カンラン岩の場合には固化域外径が大きいと500時間経過後も周方向に引っ張り応力が作用している。よって花崗岩質、カンラン岩質、斜長岩質のうちカンラン岩質が最も破砕帯を形成しやすく熱抽出に適しており、斜長岩がこれに次ぎ、花崗岩質は熱抽出に不向きであると言える。
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