本研究は、マグマからの直接熱抽出に於けるマグマ内熱交換システム(固化マグマ)の力学的安定性に関する検討を行ったものである。まず、固化マグマの材料力学的基本特性である構成則について検討を行った。すなわち、一軸状態のクリープひずみの応力依存性についてはNorton則を用い、応力のべき乗に比例するとした。クリープひずみの時間依存性については、第二期クリープを想定して、線形関係を置き、また、温度依存性については、Arrhenius則を採用した。さらに、多軸応力下に対しては、クリープポテンシャルとして、偏差応力の第二不変量を用いた流れ則を適用し、これに前述の一軸応力-ひずみ関係を与えて、三種の岩体すなわち、花崗岩、斜長岩及びカンラン岩の構成関係式を構築した。温度環境としては、次の二つの状態を代表的なものとして取り上げた。すなわち、マグマの対流が極めてゆっくりとしていて、固化域の大きさがマグマの固相線温度により決まってしまう場合と、マグマの対流が活発で固化域の大きさが主として熱バランスで決まってしまう場合の二通りの場合である。この二通りの場合について、まず熱交換システム内の、熱移動解析を実施し、固化域内の温度分布の経時変化、固化域の成長・退縮挙動を明らかにした。さらに、上記の構成関係式を用いて応力場を解析し、その特徴を明らかにするとともに、坑井近傍の破砕帯形成の観点から、各岩種の、マグマエネルギー直接抽出への適応性について評価した。その結果、上述の二通りのいずれの場合も、花崗岩、斜長岩及びカンラン岩の三者の内カンラン岩が、坑井近傍に破砕帯を最も形成しやすい性質を有し、従って熱抽出に最も適しており、斜長岩がこれに次ぐことがわかった。花崗岩が最も不向きである。
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