研究概要 |
高分子材料は軽量かつ成形が容易であることからその用途が拡大し,構造材料として利用される場合が増加している.しかし,その強度や剛性は金属材料に比べて未だ十分でなく,また,長期間使用される場合には,物理的ならびに科学的環境による劣化を生じるという難点を有している.強度材料として高分子材料が広範囲に利用されて行くためには,劣化のメカニズムを明らかにし,正確な寿命診断法を確立する必要がある.このような観点から,本研究では,紫外線照射による高分子材料の損傷劣化に焦点を絞って以下のような研究を行った. すなわち,材料の表面または内部のどの部分で生じる化学的変化が機械的特性に対して強く影響を及ぼすのかを明らかにするために,ポリプロピレン(PP)およびポリカーボネイト(PC)供試材として,フィルム状の試験片を重ね合わせ,紫外線暴露を行った.その結果,PPにおいては下側の試験片ほど劣化の進行(破断ひずみは減少)が遅くなっているものの,劣化は一番下側の試験片まで及ぶことが分かった.それに対して,PCにおいては,下側の試験片はほとんど劣化しないことが分かった.また,走査型電子顕微鏡による破面観察および赤外線吸収スペクトル解析を行った結果,紫外線照射による化学反応の進行と破断ひずみの減少の間には密接な関係があることが明らかになった.
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