本研究はADIにおける10^7回以上の超高サイクル域でのフィッシュアイ型き裂進展機構の解明を目的とするものであり、本年度では以下の2項目を実施した。 (1)超高サイクル域における疲労データ取得用の高応答引張疲労試験システムの開発 (2)フィッシュアイ型破面およびフィッシュアイ型き裂進展過程のSEM観察 (1)の疲労試験装置の開発では、ほぼ仕様通りの性能を確認した。すなわち、駆動周波数120〜200Hzの応答性を満足し、10^8回の疲労データが約6〜10日の短期間で取得可能となっている。またFEM解析を用いた試験片形状の最適化により、試験片平行部における発生応力の差異は±1%以内となっている。現在疲労試験を実施中である。 (2)では、新たな知見が得られている。すなわち、低応力超高サイクル域のフィッシュアイ型破面形成の初期段階において、基地のオーステナイトとフェライトの微細層状組織に極めて敏感なき裂進展の形跡が見い出されたことである。この破面は本供試材の△Kthよりもはるかに低い△K領域において観察されること、△K漸減疲労試験で得られた第2a段階の破面とは著しく異なること、さらに短寿命域の表面欠陥を起点とする破壊では形成されないこと、などが明らかとなっている。この低応力超高サイクル域のき裂進展機構の詳細は現段階では不明であるが、上述の観察結果により、塑性鈍化再鋭化に支配される高応力域の破壊機構とは全く異なるものと考えられ、現在さらに詳しい破面観察を実施中である。
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