研究概要 |
本年度に得られた結果をまとめると以下のとおりである. 1.磁性材料(低炭素鋼)塑性域までの応力を負荷し,各応力レベルにおいて周期的な磁場を印加したときの磁気AE(MAE)の測定をおこなった.その結果,磁場一周期間に発生するAE信号の頻度は,弾性域においては応力と共に単調に減少することが分かった.MAE信号の頻度が減少する程度は,応力が増大するに従って次第に緩やかになり,塑性域に達してもその傾向は継続する.塑性域におけるMAEの応力依存性は余り顕著でなく,そのばらつきは大きいので,磁場一周期間のMAE信号の頻度を応力の非破壊評価に利用するには弾性域の比較的低応力の方が適していることが分かった.また,従来の引張り応力に加えて,圧縮応力に対する依存性も測定した結果,磁場一周期間のMAE信号の頻度は単軸応力の正負に対して対称であることが分かった. 2.磁気音弾性による応力測定をより精密にするために、強磁性体の磁化過程の速度依存性と2次元磁化過程の測定と理論的なモデル化をおこなった.その結果,1次元速度形の非線形構成式が磁化のインデンシャル応答に比較的よく一致することが分かった.2次元磁化過程の実験のためには,2対の直交する電磁石からなる平面磁場発生装置を製作した.この装置による2次元回転磁化過程の測定から今まで提唱してきた3次元構成式によるシミュレーションがよく一致することがわかり,速度依存性や多次元磁化過程のモデル化が可能となり,より精密な磁気音弾性の基礎的な理論が確立された.
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