研究概要 |
本年度は,高温硬化型炭素繊維強化エポキシ樹脂基複合材料の処女材(未照射材)および電子線(宇宙環境に相当する10^9rad)を照射した試験片の引張破壊特性と片振り疲労試験を,大気中で実施した。用いた試験片は,一方向積層強化材の繊維方向([0°]強化材),繊維横方向([90°]強化材),および斜交積層強化材([±45°]強化材)である。電子線照射により,樹脂の硬化されるとともに繊維/樹脂界面強度が上昇して,[90°]強化材の弾性係数および破断強度は未照射材に比べて上昇すること,また,[±45°]強化材では,樹脂の硬化と界面強度が上昇して降伏強度が電子線照射により上昇するとともに,層間強度が上昇して破断強度も上昇することを明らかにした。一方,[0°]強化材では,電子線照射による機械的特性に及ぼす影響はほとんど見られなかった。疲労特性について見ると,[±45°]強化材では,引張破壊特性と同様に,電子線照射により疲労寿命が上昇し,この上昇はとくに低応力域で顕著であることを示した。一方,[0°]強化材では,電子線照射の疲労寿命に及ぼす影響は小さかった。さらに,炭素繊維強化PEEK樹脂基複合材の[±45°]強化材の破壊と疲労に及ぼす水環境効果について検討を加え,エポキシ樹脂をマトリックスとする複合材料と比較して,吸水量は極めて小さいこと,また,引張強度に及ぼす吸水効果はほとんど観察されないが,疲労強度は吸水により大きく低下することを明らかにした。さらに,アコースティックエミッション信号の振幅・周波数・持続時間などの複数AEパラメータ評価を行うとともに,荷重負荷・疲労試験の途中で試験を中断する中断試験を実施して,超音波顕微鏡による界面・層間損傷観察,および低真空型走査電子顕微鏡による破面観察を行い,破壊機構に及ぼす電子線照射環境効果について総合的に検討した。
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